ライブドア事件
最判平成23年9月13日

東芝事件
東芝株式を取得したと主張する投資者らが、①有価証券報告書・四半期報告書に不適切会計に関する重要な虚偽記載があったこと、②内部統制報告書でも内部統制が有効であると虚偽記載があったこと、③連結子会社の減損損失の開示を怠り適時開示義務に違反したこと、
を理由に、東芝に対して損害賠償を求めた事案。

オリンパス事件
オリンパス株式会社の株式を取得した投資者らが、オリンパスが提出した連結純資産を約500億円から約1200億円を過大に計上する等の虚偽記載等があったことを理由として、オリンパスに対して損害賠償を求めた事案です。

西武鉄道事件
本判決は、有価証券報告書等の虚偽記載を理由とする損害賠償請求において虚偽記載と相当因果関係のある損害の範囲について、最高裁判所がはじめて判示したリーディングケースです。

ライブドア事件
株式会社ライブドアホールディングスの株式を取得した投資者ら、同社が提出した有価証券報告書に連結経常赤字約3億円を連結経常黒字約50億円との虚偽の記載があったことを理由として、約108億円の損害賠償を求めた事案です。

アーバンコーポレイション事件
不動産に関するコンサルティング会社であった株式会社アーバンコーポレイションが提出した臨時報告書及び有価証券報告書に虚偽の記載があったことを理由として、同社の株主らが不服として再生債権査定異議の訴えを提起した事案です。
事案の概要
株式会社ライブドアホールディングスの株式を取得した投資者ら、同社が提出した有価証券報告書に連結経常赤字約3億円を連結経常黒字約50億円との虚偽の記載があったことを理由として、約108億円の損害賠償を求めた事案です。
ライブドア事件における虚偽記載の内容は、本来売上に計上することができないライブドア株式の売却益を連結売上高に計上し、また、子会社に対する架空の売上高を連結売上高に計上していたというものでした。
本判決の概要
・本判決は、金融商品取引法第21条の2第3項(当時は第2項。以下同じです。)の損害推定規定を初めて最高裁判所が適用したケースです。
・本判決は、金融商品取引法第21条の2第3項の損害推定規定における、「公表」の意義について、単に当該有価証券報告書等に虚偽記載等が存在しているとの点についてのみ上記措置がとられたのでは足りないことは明らかであるが、有価証券報告書等に記載すべき真実の情報につき上記措置がとられたことまでも要すると解すべきものではないとして、取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実について上記措置がとられれば足りる旨を判示しました。
・また、本判決は、金融商品取引法第21条の2第1項の損害とは、一般不法行為の規定に基づきその賠償を請求することができる損害と同様に、虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むものと解され、同条第3項は、同条第1項を前提として、虚偽記載等により生じた損害の額を推定する規定であるから、同条第3項にいう「損害」もまた虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むものと解するのが相当であり、これを実際の取得価額と虚偽記載がなかった場合に想定される市場価額との差額に限定すべき理由はない旨判示しました。
判旨
「検察官は、有価証券報告書等の虚偽記載等の犯罪につき刑訴法に基づく種々の捜査権限を有しており、その権限に基づき、有価証券報告書等の虚偽記載等を訂正する情報や有価証券報告書等に記載すべき正確な情報を入手することができるのであって、その情報には類型的に高い信頼性が認められる。したがって、検察官は、金商法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たるというべきである。」
「金商法21条の2第2項(当事務所注:現第3項)にいう「虚偽記載等の事実の公表」とは、有価証券報告書等の「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」について、多数の者の知り得る状態に置く措置がとられたことをいうのであって(同条3項(当事務所注:現第4項))、その文理からすれば、「虚偽記載等の事実の公表」があったというためには、単に当該有価証券報告書等に虚偽記載等が存在しているとの点についてのみ上記措置がとられたのでは足りないことは明らかであるが、有価証券報告書等に記載すべき真実の情報につき上記措置がとられたことまでも要すると解すべきものではない。なぜなら、取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる情報が開示され、その結果当該有価証券が大きく値下がりしたにもかかわらず、真実の情報が明らかにされないことをもって「公表」がないものとし、同条2項の推定規定を適用することができないのでは投資者の保護に欠け、相当ではないからである。むしろ、同項が「公表」をもって損害の額を推定する基準時としたのは、信頼性の高い情報を入手することのできる主体が「公表」をすることによって、当該有価証券に対する取引所市場の評価の誤りが明らかになることが通常期待できるという趣旨によるものであると解され、また、評価が誤っていたかどうかは、当該「公表」の時点で既に明らかになっている事実を考慮に入れて判断されるべきことであるから、同条3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」について多数の者の知り得る状態に置く措置がとられたというためには、虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実について上記措置がとられれば足りると解するのが相当である。」
「有価証券報告書等の虚偽記載等によって損害を被った投資者は、民法709条など一般不法行為の規定に基づき損害賠償を請求することが可能であるところ、金商法21条の2は、上記投資者の保護の見地から、一般不法行為の規定の特則として、その立証責任を緩和した規定であると解される。そして、同条1項においては、投資者が請求することのできる額については、同法19条1項の規定の例により算出した額(以下「19条1項限度額」という。)が上限とされているほかは、何ら限定されていないことからすれば、同法21条の2第1項にいう「損害」とは、一般不法行為の規定に基づきその賠償を請求することができる損害と同様に、虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むものと解されるところ、同条2項は、同条1項を前提として、虚偽記載等により生じた損害の額を推定する規定であるから、同条2項にいう「損害」もまた虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むものと解するのが相当であって、これを取得時差額に限定すべき理由はない。そして、金商法21条の2第5項が同条2項を前提とした規定であることからすれば、同条5項にいう「虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り」とは、取得時差額相当分の値下がりに限られず、有価証券報告書等の虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりの全てをいうものと解するのが相当である。」
「投資者が、複数回にわたり、虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券の取引を行った場合においても、理念的には個々の取引ごとに上記虚偽記載等に起因する損害が生じているとみることができるから、個々の取引ごとの取得と処分との対応関係が特定され、取得価額及び処分価額につき具体的な主張、立証がされているときは、裁判所が個別比較法によって請求可能額を算定することを否定する理由はない。しかしながら・・・投資者が複数回にわたってそれぞれ異なる価額で有価証券を取得し、これを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合においても、上記の主張、立証がされていない場合には、裁判所が、総額比較法により請求可能額を算定することができると解するのが相当である。」
「金商法21条の2は、投資者の保護の見地から、一般不法行為の規定の特則として、その立証責任を緩和した規定と解されるから、同条所定の賠償債務は不法行為に基づく損害賠償債務の性質を有するというべきである。
したがって、金商法21条の2に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、かつ、何らの催告を要することなく、遅滞に陥るものと解するのが相当である。」
